特別受益とは何か(相続問題)

特別受益とは

特別受益とは・・・相続人が被相続人から特別に財産をもらうことをいいます。

特別に財産をもらった相続人が特別受益者です。

そして、相続開始時の財産(遺贈も含みます)に特別受益にあたる贈与(生前贈与)を加えたものが全相続財産(みなし相続財産)となります(これを特別受益の「持戻し」といいます)。その上で、相続人間の公平性を図るために、全相続財産を基準として具体的相続分を計算します。特別受益を受けた相続人の具体的相続分を計算する際には、特別受益を前渡し分として差し引くことになります。

ちなみに、特別受益の対象となる人は相続人に限られます。相続人以外の人が生前に贈与を受けていても特別受益にはなりません。例えば、被相続人が生前に、友人に1000万円贈与していたとしても、特別受益にはなりません。ただし、相続人でない者に行われた贈与が多額であり、相続財産の一定割合以上である場合は、相続人はその人に対し遺留分侵害額請求を行うことができます。

また、相続分の計算における特別受益の「持ち戻し」の 対象期間は無制限です。 そのため、相続開始から40年前などのかなり昔に行われた生前贈与でも、特別受益として持ち戻し計算の対象になります。

具体的事例で計算を方法を説明いたします。

事例

被相続人Aの子BCDの3人が相続人として存在している。相続財産が1000万円ある。BがAから生前に200万円の特別受益に当たる生前贈与を受けていた。BCDはぞれぞれいくらもらえるのか?(各自の具体的相続分はいくらになるのか?)

計算手順

➀特別受益の持ち戻し

相続財産に生前贈与200万円を持ち戻し、1000万円+200万円=1200万円をみなし相続財産とします。

➁相続分の計算

BCDそれぞれの相続分は、3分の1であるため、各自の持分は1200万円×3分の1=400万円となります。

③特別受益を受けた相続人の具体的相続分を計算する際には、特別受益を前渡し分として差し引く

Bは生前に200万円をもらっているため、前渡し分として差し引かれます。

Bの相続分は400万円-200万円=200万円となります。

CDの相続分は、各400万円となります。

【結論】B200万円、C400万円、D400万円 となります。

被相続人が特別受益を差し引かないことを遺言で決めていた場合

被相続人が遺言で特別受益を差し引かないと決めていた場合には、その遺言に従うことになります。ただし、特別受益が遺留分を侵害していれば、遺留分を有する相続人は、特別受益者に対して遺留分侵害額請求を行うことが可能です。

何が特別受益に該当するの?

特別受益に該当するものとして以下のものがあります。

①相続人が婚姻または養子縁組のために受けた贈与

例えば、結婚資金の贈与などが該当します。

②相続人が生計資金として受けた贈与

例えば、住宅の購入資金の援助や特別な学費など、他の相続人とは別に、特別にもらった資金などが該当します。ただし、新築祝いなどの交際費の意味合いが強いものや、その場限りの贈り物などは含まれません。

③相続人が受けた遺贈(いぞう)

遺贈とは、遺言で財産を譲ることです。このように、遺言で財産を渡す場合も、特別受益として扱われます。

居住用不動産の特例

2019年(令和元年)7月1日に施行された改正民法の内容です。令和元年7月1日以降に発生した相続には、改正された民法903条4項が施行されますので、下記をご参照ください。

婚姻期間が20年以上の夫婦間でなされた贈与・遺贈のうち居住用不動産(建物やその敷地)については「持戻し免除の意思表示」があったと推定する。というものです。

下記の事例で説明します。

妻A、子Bが相続人。被相続人から妻Aへ居住用不動産(評価額2000万円)を贈与した。相続開始時の財産は預貯金2000万円のみであった。それぞれの相続分は2分の1です。

この場合、居住用不動産の生前贈与も「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」(民法903条)にあたりますので、特別受益となります。

すると、みなし相続財産が、2000万円+2000万円=4000万円。各相続分は2分の1であるため、各2000万円。具体的相続分は、A 2000万円-2000万円=0円、B 4000万円-2000万円=2000万円となります。

つまり、Aは不動産をもらった代わりに、もらえる預金は0となるのです。これでは、妻の生活が不安定になってしまいます。

そのため、「持戻し免除の意思表示」があったと推定するとしたのです。そうすると、相続財産の預貯金2000万円の2分の1である1000万円を妻Aが相続することができるので、安定した生活をすることができるようになります。

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